YouTubeを観るときはもっぱらバレエを観ています。幼少期にクラシック・バレエを習ったことがありましたが、壊滅的な柔軟性の欠如により、コンプレックスを植え付けられて終わりました。令和の時代に生まれていたら、きっと続けていたんじゃないかと思うときがあります。自宅にいながら、世界のバレリーナのみならず、バレリーナの卵たち、コンクール、お教室の様子まで、ありとあらゆる踊りを観ることができます。専門的なことはわからなくとも、観ていればどこが美しく何を目標とすべきか、何となく分かってきます。わたしの幼少期は、なぜ自分がこんなにも痛い思いをしているのか、何を目指すべきなのか、さっぱりわからず何も面白くありませんでした。まあ、もし続けていたとしても大して上達しなかったと思いますが…。
好きなのはいわゆる古典バレエです。《白鳥の湖》はもちろん、《ジゼル》や《ドン・キホーテ》などをよく観ます。ジゼルの音楽は、ピアニストの間では教則本で知られている、ルイ・アダンの息子が音楽を書いているんですね。アドルフ・アダン。音楽と物語がマッチしていて、とくに2幕は本当に美しいです。バレリーナの血の滲む努力にはリスペクトしかありません。足の甲から指先まで、少しでもしなやかさが欠けると、途端に現実に引き戻されてしまいます。
コンクールでは、わずか数分ですが、たまにそのキャラクターというか物語の背景が見えるコンテスタントがいます。ローザンヌで優勝したときの熊川哲也さんなどまさにそうした例(ドン・キホーテ)だと思います。一方で、全幕なのに、突然コンクールが始まったように脈略が無くなってしまうときがあります。ピアノでもコンクールや入試で、時間の都合でソナタの一部しか弾かないときがありますが、それと似た状況なのかもしれません。
バレエが好きなわたしですが、バレリーナと共演したのは一度だけ。そのときはフルートと「瀕死の白鳥」をやりました。お馴染みのサン=サーンスの《白鳥》は何度も弾いていますが、バレエとの共演以来、右手の十六分音符を弾くと、バレリーナの細やかな足先を思い浮かべます。まさにあの足先のようなタッチで弾きたいのです。
いつか機会があれば、ラヴェルやドビュッシーの音楽で、バレエと共演したいです。そしていつの日かストラヴィンスキーを。