わたしがYoutubeチャンネル「Czech Piano Music Channel」を開設したのはもう4年も前のことです。チェコの、あまり知られていないピアノ曲と、ほとんど知られていないピアノ曲を録音していこうと思い立ち、Woodnote Studio(京都)の笹井慎二さんにご協力をお願いし、少しずつですが録音を続けています。録音する曲はほとんど、チェコの古本屋で文字通り「発掘」したもので、今では絶版になっているものも含まれています。
きっかけは色々あります。金澤攝さんの素晴らしい本『失われた音楽 秘曲の封印を解く』に共感を覚えたり、わたしの(フォルテピアノの)先生であるJ. トゥーマ氏が、知られざるボヘミアの音楽をヒストリカル・オルガンによりCDを制作し続けていたり…。いわゆる傍流と呼ばれる作曲家が、けっして亜流ではないということを知りました。それらの糸を紡いでいくこともまた、演奏家のひとつの責務であると思うに至りました。おこがましいことですが、作品の価値を損ねることがないよう願いながら、日々ピアノに向かっています。
数年前、ある演奏会でE. サティを中心としたプログラムを演奏しました。結果的に3時間半を超える長い演奏会になりましたが、数日後お客様のひとりからメールを受け取りました。演奏会は長くて少し疲れたというお話から始まりましたが、サティの作品に魅力を感じ、その日以来ずっとサティの作品を聴き漁っておられると。サティとの出会いに感謝を述べられていました。わたしは、人の人生をほんの少し豊かにすることが出来たのかもしれないと、かつてない充足感を得られたのでした。
Youtubeチャンネルは、およそ7割ほどの視聴者がチェコ人のようです。自国のマイナーな曲を見知らぬ外国人が延々と取り上げていて面白がっているのかな、と想像しています。来月、今年2度目のレコーディングを予定しています。