近々ジョリヴェの《リノスの歌》を弾く機会があるので、さらっています。この曲は、フルートのレパートリーの中でもとくに好きな作品のひとつです。
先日友人と話していたら、最近ブルーノ・カニーノ氏が弾いたリノスがとても良かった、初めてこの曲の良さが理解できたと言っていて、どのような演奏だったか気になっていました。そこでYouTubeを漁っていると(だいぶ昔のものですが)アップロードされていました。
それはもう爆演でした(良い意味です)。この曲はフルートのコンクールなどでは定番ですが、いつもバランスに苦心します。ピアノの響きが分厚いところに、フルートの低音域が重なることが多いからです。わたしも、「ピアノの音が大きかった」と言われたことがあります。でも、カニーノ氏の演奏を聴き、響きの渦にのまれながらも藻掻いている、そんなフルートのほうがあるべき姿なのでは、と思いました。こんなことを書くとフルートの先生方に怒られてしまうのかもしれませんが…(笑)
特徴的な7拍子で刻まれる踊りの部分。カニーノ氏の弾く鋭い和音が打ち付けられて、それは「ソルフェージュ的に正しい」7拍子ではなく、踊りの7拍子として体感することが出来ました。歌の部分も、「美しく」弾きがちですが、カニーノ氏のピアノは、何か厳しさ、無情さが支配していて、ハッとさせられます。
冒頭に、「叫びと踊りが交錯する哀しみの歌」と作曲家によって書かれていて、カニーノ氏の演奏はまさにそれを表現しているように思います。
このようにプリミティブな精神をピアノの音に宿すことが出来るとは…。また、それは完全にコントロールされた響きのなかでなされていて、圧巻という他ないです。ますますこの曲が好きになりました。