12日は京都芸術センターで、ペトロフピアノコンサートでした。チェコのピアノ、ペトロフは、チェコでもたくさん弾きましたが、京都芸術センターのペトロフはとくに思い出深いピアノです。このピアノは、1910年代に贈られたピアノで、地域の方々によって大切に保存されてきました。明倫ペトロフの会の皆さんには頭が下がります。その音色を知っていただくべく、毎年ピアノコンサートを開催されています。演奏会への出演はおそらく3度目になりますが、実は他にも、京都芸術センターとの共催事業で何度か演奏させていただいています。博士課程の学位申請リサイタルでは、ドゥシーク、スメタナ、ヤナーチェク、スラヴィツキーのオール・チェコ・プログラムを。とくに印象に残っているのは、東京の俳優さんたちと音楽劇をしたことです。ヤナーチェクの老いらくの恋を題材とした作品で、今回演奏したヤナーチェクの《霧の中で》がメインテーマでした。ですから、この曲を弾くと、その劇の情景がぶぁーっと浮かびます。それほど、ヤナーチェクとペトロフの世界観がマッチしていました。私見ですが、このピアノは音離れがよく、奏者は音の残像を追いかけることになります。そうして儚い音がするのです。それが、ヤナーチェクの、心象風景のような音楽―追憶と混沌とした現在地、そして未来への漠然とした不安や期待―とよく合う。
今回の演奏会では後半にガーシュイン、クラインを並べました。狂騒の20年代アメリカを象徴する《ラプソディー・イン・ブルー》から、ホロコーストの犠牲者であったクラインのソナタへのくだりは、何だか人間の狂気を際立たせていた気がします。
当日の演奏の一部はYoutube(Czech Piano Music Channel)にアップロードしています。よろしければお聴きください。お越し下さった皆様、明倫ペトロフの会の皆様、ありがとうございました。