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慰めを求めて…

てんこ盛りだった秋が終わりました。最後の三連休は、学生時代からお世話になっている合唱団、京都西山コールアカデミーの定期演奏会と、高校大学大学院と同じ経歴を歩む後輩のピアニスト池田菫さんの学位申請リサイタルでした。

池田さんのリサイタルではモシェレスの2台ピアノのための作品《ヘンデルへのオマージュ》を共演しました。モシェレスは19世紀に活躍したピアニスト。わたしは今、ロンドン・ピアノ楽派について研究をしていて、モシェレスはそのひとりです。ロンドン・ピアノ楽派は19世紀前半のある一時期、ロンドンに出現した流派で、華麗なテクニックを駆使した華やかな演奏様式が最大の特徴です。その源流はクレメンティとも、ドゥシークとも言われ(後者を主張しているのはもっぱらわたしですが…)、モシェレスもその流れを多分に汲んでいるのを今回確認することができました。

今年は、わたしが展開しているYoutubeチャンネルで、ドゥシークのロンドン時代の作品(およそ1790年代)を録り終えました。わたしはロンドン・ピアノ楽派の作品を演奏すると、生理的な楽しさを感じます。多幸感というのかな?政治的な衝突や戦争があっても、多くの発明がなされ、産業、科学、経済の発展があり、前向きな時代を反映しているのかもしれません。

この秋はほとんど展覧会に足を運べませんでしたが、録画しておいたゴッホについてのTV番組を見ていたところ、ゴッホは生前、「音楽のように、慰めを与えられる絵を描きたい」と言っていたそう。ゴッホにとって、音楽は慰めを与えてくれるものであり、また、慰めを求めていたのですね。だから、ゴッホの絵は優しい気持ちになるのだと納得しました。ゴッホは結局、絶望から逃れられずに自死してしまいますが…。

12/14にバロックザール(京都・上桂)でヒンデミット《マリアの生涯》を演奏します。今はリハーサルをしながら、ヒンデミットの「絶望」をひしひしと感じています。