11/8は、わたしが長年お世話になっている、京都シティーフィル合唱団のイベントがありました。今年のヴェルディのレクイエムをもって、常任指揮者を退任された明石さんへの、感謝の気持ちを伝えるコンサート。団員さんたちが一生懸命作り上げたコンサートです。半世紀以上前に、シティーフィルの前身であるベリョースカ合唱団を創立され、その頃歌われていたロシア民謡を皮切りに、ドイツへの演奏旅行で演奏したヴェルディや、フォーレ、モーツァルトのレクイエムから抜粋、病院でのキャロリングで歌われた賛美歌等々、思い出深い曲を並べて、たいへんあたたかい、気持ちのこもった演奏会となりました。
大学の3年だったか、声楽の友人Mさんに呼び止められ、「合唱に興味はありませんか?ある合唱団でピアニストさんが産休に入られて、代役を探しています」と訊かれました。正直なところあまり興味はなく、マタイ受難曲ぐらいしか思い浮かばず…。しかし興味がないからこそ、やってみたいと思い、引き受けることにしました。すると、住所の書かれた紙を渡されて、「ここに行って話を聞いてきて。黒縁メガネのおじさんがいるから」と言われました。それが明石さんとの出会いでした。
指揮者というので緊張して行ったわたしの目の前に、どどーーんと楽譜を置いて、「まあ、社会勉強やと思って頑張ってや」と明石さん。曲はモーツァルトのレクイエムと…ミサ・ソレムニスだったか?とにかくあまりの量に卒倒したのを覚えています。合唱団が3つあったのです。譜読みが追いつかず、原曲をよく知らぬまま練習に行くこともありました。メチャクチャです。でも飲み会には必ず顔を出しているわたしに明石さんは驚き呆れながらも、長くお世話になることになりました。
そういうわけで、オーケストラ付きの合唱曲に親しむこととなり、たくさん勉強させてもらいました。明石さんとの出会いがなければ、今のわたしはないと断言できます。驚くべきことに、土曜日の演奏会でわかったことは、そういう人がわたしだけではなかったということです。たくさんの方々明石さんにご挨拶し、握手を求め、話し掛ける。その光景に胸が熱くなりました。
亡くなられた作曲家の松本日之春先生が、よく演奏家との思い出を語られていて、それが良い思い出なのに、とても寂しげだったのが印象に残っています。懐かしむのは、その時間が戻ってこないことを知っているから。演奏という体験は、楽しいけれど一瞬で、だからこそ今その時間、その人を大切にしたい…そう思いました。
さて今週土曜日はいよいよシェーンベルクの演奏会です。ヴィブラフォンの谷口かんなさんのお力を借りて、良い舞台にしたいと思っています。応援よろしくお願いします。