4/25は、京都・祇園にあるレストランキエフでリサイタルがあります。オール・ショパン・プログラムで、ショパンのスケルツォを全4曲、演奏予定です。
スケルツォは2番を中学生のときに、3番を高校生のときに、1番を大学生のときによく勉強しました。(そういうわけでその順に記憶が定着しています。)思い出すのは、大学4年から3年間師事した神谷郁代先生のことです。少し、先生のことを記しておこうと思います。
神谷先生は、不思議な魅力のある方で、また私生活も謎めいていて、学生の間では嘘かまことか不明の都市伝説のような噂が飛び交い、まさに芸術家という印象でした。静かなレッスンで、ひと通り聴いて下さったあとに何点か注意を受け、しかし忘れられない注意点を残して下さりました。おもに、発音の仕方、基礎練習の方法、レパートリーの作り方、気持ちの有り様です。情けないことに、わたしはかなり放蕩状態でしたので、迷惑をかけまくり、後悔しかありませんが、先生のプロとしての姿勢、気持ちの持ち方には一番影響を受けていると思います。
あるとき、ヴァイオリンの試験でソナタを演奏した際に、ヴァイオリンの先生から叱責を受け、意気消沈していたことがありました。わたしも興奮した状態で弾いてしまい、今思えば良くない演奏だったのだとわかります。しかし当時は、その叱責が理不尽なものに思えて、とても悔しかったのです。そうして神谷先生のレッスンに行き、事の顛末をお話したところ、「まあまあ、甘いものでも食べなさい」とチョコレートを出して下さり、あなたの気持ちはわかるけれど、と前置きした上でこう仰ったのです。「人の評価というものは、それがどれだけ的外れだと思ったとしても、そこには1%でも真理が隠されているもの。そういうときは『ありがとうございます。精進します』と言いなさい」。
先生が長年、第一線で演奏活動を続けておられた理由を垣間見た瞬間でした。それ以来、わたしはその言葉を常に胸に留めています。
スケルツォのレッスンを最初に受けたときには一言、「まだまだねぇ」と仰ったのが忘れられず…先生は天国で聴いていて下さると信じています。