南青山にある岡本太郎記念館に行ってきました。我が家の玄関には太陽の塔の小さなレプリカが鎮座しており、岡本太郎にはとても興味がありました。
小ぢんまりとした洋館ですが、その中身には圧倒されてしまいました。まさに芸術が爆発。岡本太郎という人は、その発言を地で行く人です。「芸術はうまくあってはいけない、きれいであってはいけない、心地よくあってはいけない」。「きれい」というのは、美の本質には関係なく、その基準は時代によって変化する。同様に、「まるで写真のようだ」と感心するほどうまく描かれていても、それは芸術の本質とは関係がないと言い切ります。したがって、岡本太郎は意識的にそういうものを排除しています。
そのように既存の価値観を破壊していくので、観るほうにも大変な緊張が走ります。それが、圧倒的なエネルギーであり、それこそが岡本太郎の言う「芸術」なのです。確かに、居心地の良い空間とは言えませんでしたが、魅力的で離れがたい空間でした。後年、大阪万博で太陽の塔が人気を博したとき、岡本太郎自身は、大衆に受け入れられたことに困惑し、自己矛盾に陥ったとどこかに書いてありました。50年以上を経てもなお、色褪せることなく大阪のシンボルとして輝く太陽の塔をみる限り、岡本太郎は本当に、どのような時代にも左右されない美しさを示したのだなぁと感じます。
そのような境地にいくと、どのような景色が見えるのでしょうか。わたしも、きれいに弾くことにとらわれずに、作品の「美しさ」を共有する、それが目標です。