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音楽を本当に学ぶということは

尊敬する言語学者の黒田龍之助さんは、著書の中で「外国語を学びながら身につけるべきは、現地の人々の常識である」と述べています。そこで暮らしていれば自然と身につくようなこと。外国語学習はそれらの知識を積み重ねて進めていくべきであり、「検定試験のハイスコアを目指して、瞬間的に語学力を高めたところで、そんなものはすぐに失われる。だが文化の知識は後々まで残る。それが本物であるかぎり。」

チェコ語学習で何度も挫折した(している)わたしにとって、黒田さんの本はその都度原点に立ち戻らせてくれます。そしてこの言葉は、音楽にもまさに当てはまると思います。わたしのように、過去の作品を演奏することがほとんどの場合、その作品と作曲家が生きた時代の常識を知ることはとても大切なことです。それはもちろん、Andanteがどれくらいの速さだったか、とかMinuetがどういう踊りか、知っておくということも含まれますが、わたしはもっと人々の生活を知りたいと思っています。

たとえば、ドゥシークやコジェルフ、ベートーヴェンなど、「狩り」をモチーフにした曲は多くありますが、それは単にホルンの音を模したものではありません。狩猟は一部の特権階級、富裕層にだけ許された娯楽なので、そこには気高さ、誇り高さがあります。並の作曲家では経験出来ないことなので、貴族などにお供した経験があったかもしれないと想像するのは楽しいです。

当時の結婚観、倫理観、経済観念や衛生観念など、知っていると作品の違った側面が見えてくることがあります。そして、弾き継がれた伝統を知ることもまた、多くを教えてくれます。それが音楽を学ぶ醍醐味と言えるかもしれません。

 

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