『チェコを知るための60章』という本を読んでいたら、福田宏さんが政治と音楽について一章書かれていて、その中でKarel Gottが体制派と反体制派の間で揺れ動いた旨の記述がありました。きっとよく知られた話なのだろうが、わたしは詳しく知らなくて…。wikipediaでもその辺はサラッと流されているような。
Karel Gottという人は、2019年に亡くなった、チェコの国民的な大歌手です(なぜかカタカナにしない方がしっくり来ます)。言語学者の黒田龍之助さんが、彼のことを「チェコのサブちゃん」と書いているのですが、わたしはいまいちピンとこなくて、どう考えても「チェコの布施明」だと思います。伸びやかな美声で人気を博し、その爽やかな顔も、政治的なシガラミなんて無縁、という感じがします。彼はいわゆる「正常化」の時代にチェコスロバキア国内で活動をしながら、西側でも活動を展開した(許された)特異な存在であったそうで、その辺はわたしも当時のミュージックビデオなどを見ながら、どうなっているんだろう?と思っていたところでした。彼は、クビショヴァーが矢面に立った、体制を批判する憲章77に反対する署名をしましたが、一方で軍事侵攻を批判する歌も歌ったとかで、まさに政治に利用されながら闘ったということでしょうか。
ビロード革命後は、引退を決意するも、人気が衰えることはなく、活動を継続したそうです。一文にすると、なんてことはないように見えますが…なかなかセンシティブな事ですよね。
ところで、社会主義時代のポップスは、YouTubeでミュージックビデオを見るととても面白いです。お化粧やファッションも可愛いし、登場人物やら小物やらも、演出も含めて、色々と想像が膨らみます。